「そろそろ家、買った方がいいのかな」
そう思い始めるきっかけは、人によってかなり違います。
今の家賃を払い続けるくらいなら、同じくらいの負担で持ち家を買った方がいいのでは、と考える人。
子どもが生まれて、今の賃貸が少し手狭になってきた人。
親から土地を譲り受けて、「せっかくならここに家を建てようか」と考え始める人。
50代、60代になって、これから先を暮らしやすい家へ移りたい人もいます。
同じ「家が欲しい」でも、出発点はかなり違います。
では、何から始めるのがいいのか。
結論からいうと、最初に住宅会社を探すより、「なぜ今の住まいを変えたいのか」を一度言葉にしてみるところから始めるのがよさそうです。
住宅展示場へ行く。土地を探す。住宅ローンを調べる。
もちろん、いずれ必要になるかもしれません。
でも、その前にここを整理しておくと、その後の選択肢を比べやすくなります。
この記事は、自分や家族が住む家を持つことを考え始めたものの、
- 賃貸を続けるか
- マンションを買うか
- 建売住宅を買うか
- 中古住宅を買って直すか
- 注文住宅を建てるか
までは決めていない人を想定しています。
投資用の住宅購入は、目的も判断軸もかなり違うので、ここでは扱いません。
この記事でわかること
- 家を欲しいと思った「きっかけ」を最初に整理する理由
- 注文住宅を考える前に比べておきたい選択肢
- 注文住宅が候補に残ったあと、何から始めればいいか
この記事の調べ方
住宅金融支援機構の住宅ローン利用者調査・住宅取得予定者調査、国土交通省の住宅市場動向調査を確認しています。
また、条件整理が十分でないまま家づくりを進めると何が起こりやすいのかを見るため、住宅購入経験者のアンケートや、住宅会社・設計事務所、注文住宅経験者の体験談も確認しました。
体験談は個別の例なので、それだけを根拠に一般化はしていません。公的調査や複数の情報と分けて扱っています。
確認日:2026年9月25日
家が欲しい理由は、人によってかなり違う
住宅を取得する理由は、一つではありません。
住宅金融支援機構が2025年に行った調査では、住宅取得理由として上位にくる項目が年代によって違っていました。
20代・30代では「結婚、出産」。
40代では「子どもが大きくなってきた、増えた」。
50代・60代では「高齢になり、暮らしやすい家がほしい」。
住宅取得を予定している人を対象にした別の調査でも、20代では「家賃が高い(家賃がもったいない)」を理由に挙げる人が24.5%いました。
ここで大事なのは、数字そのものではありません。
家が欲しくなった理由が違えば、最初に調べたいことも違う。
ということです。
「みんな家を買う年齢だから」で動き始めるのと、「家賃負担を見直したい」から動き始めるのでは、最初に見るべきものは同じではありません。
「家が欲しい」を、もう一段だけ具体的にしてみる
たとえば、
「子どもが生まれたので家が欲しい」
という人がいたとします。
でも、本当に変えたいのは何でしょうか。
- 部屋数が足りない
- 子どもの足音を気にする
- 荷物が増えて収納できない
- 希望する学校の近くへ移りたい
- 庭で遊ばせたい
同じ「子どもが生まれた」でも、困っていることは違います。
「家賃がもったいない」も同じです。
本当に知りたいのは、
今と同じくらいの毎月負担なら、賃貸を続けるより買った方がいいのか
ということかもしれません。
この場合、家賃と住宅ローン返済額だけを比べても答えは出ません。
購入すれば、諸費用、固定資産税、保険、修繕などもかかります。
一方、賃貸にも将来の家賃負担があります。
ここはかなり大きなテーマなので、別記事で「賃貸と持ち家のLCC(生涯コスト)比較」として詳しく見ていきます。
「老後に暮らしやすい家が欲しい」なら、広い家を建てることが答えとは限りません。
階段が少ないこと。
病院や買い物へ行きやすいこと。
車を手放したあとも暮らせること。
自分たちで維持管理しやすいこと。
そんな条件の方が大事になることもあります。
「家が欲しい」を、
今の住まいの何を変えたいのか
まで掘ってみると、次に見るべき選択肢がかなり変わってきます。
そもそも、買わないと解決できない?
ここで一度、「そもそも買う必要があるのか」も考えてみます。
今の賃貸が狭いのであれば、選択肢は注文住宅だけではありません。
- 今より広い賃貸へ住み替える
- 中古マンションを買う
- 新築マンションを買う
- 建売戸建てを買う
- 中古戸建てを買ってリフォームする
- 注文住宅を建てる
があります。
家を買うこと自体に魅力を感じているなら、それも立派な理由です。
ただ、
家を買うことが目的なのか。 今の暮らしの困りごとを解決することが目的なのか。
ここは一度分けておいた方が、あとで迷いにくそうです。
動機によって、最初に調べることは変わる
| 家を考え始めたきっかけ | まず確認したいこと | 注文住宅以外の主な選択肢 |
|---|---|---|
| 家賃がもったいない | 賃貸継続と購入の総負担 | 中古・建売・マンション |
| 子どもが増えて狭い | 必要な広さと、その広さが必要な期間 | 広い賃貸・中古・建売 |
| 音や生活制約が不満 | 何の制約をなくしたいか | 戸建賃貸・建売・中古戸建 |
| 親から土地を譲られた | その土地に何が建てられるか | 売却・活用・建築 |
| 老後の住まいを考えたい | 返済期間、立地、段差、維持管理 | マンション・中古+改修 |
| 間取りや性能に強い希望がある | 既製住宅では実現しにくい条件か | 建売・中古との比較 |
選ぶときのしるべ
家賃が気になる → まず賃貸と購入の総負担を比べる
広さが足りない → 何年、どれくらいの広さが必要か考える
土地がある → その土地で何が建てられるか確認する
老後が気になる → 家の広さより立地・段差・維持管理も見る
注文住宅が気になる → 「既製住宅では満たしにくい条件」があるか考える
この段階では、注文住宅を選ばなくても構いません。
むしろ、他の選択肢を一度見た方が、
「それでも注文住宅にしたい理由」
がはっきりします。
条件を決めずに始めると、家づくりはけっこう簡単に迷子になる
家づくりの条件整理は、少し面倒です。
なので最初は、
「とりあえず住宅展示場へ行ってみよう」
となりがちです。
それ自体が悪いわけではありません。
ただ、何を大事にしたいのかが曖昧なまま打ち合わせを始めると、途中で話がずれてくることがあります。
SUUMOが住宅購入経験者2,075人を対象に行ったアンケートでは、夫婦の意見が食い違った理由の1位は予算。
その次に立地、間取りが続いています。
少し古い調査ではありますが、家づくりで何が衝突点になりやすいのかを見るには参考になります。
体験談の中には、夫婦それぞれの「譲れない条件」を紙に書き出したところ、二人とも最優先は「利便性」だと分かり、その後はあまり揉めなくなった、という例もありました。
住宅会社や設計事務所の実務記事でも、「夫婦で意見が合わない」という相談は珍しくないようです。
ある工務店では、夫婦それぞれで譲れない条件を書き出し、
「好きなもの」よりも、
「こうなると困ること」
を確認する方法を紹介しています。
この考え方は分かりやすいと思います。
「広いリビングが好き」だけではなく、
「家族4人が同時に座れないのは困る」
まで具体的にすると、必要な条件に変わるからです。
プランを何度も考え直すこともある
個人の体験談なので一般化はできませんが、住宅会社5社を比較し、着工まで5~6か月、その間に8パターンのプランと見積もりを作ってもらったという例もありました。
もちろん、何度もプランを練ること自体が悪いわけではありません。
一生に何度も買うものではないので、納得するまで考える時間は必要です。
ただ、
「何を優先するか決まっていないので、同じところを何度も行き来する」
のと、
「優先順位は決まっていて、その中でより良い案を比較している」
のでは、かなり違います。
最初に条件を整理する目的は、家を早く決めることではありません。
何度考え直しても戻ってこられる、判断の軸を作っておくことです。
「持ち家が欲しい」と「注文住宅を建てたい」は別の話
住宅購入を考え始めると、持ち家=注文住宅のように話が進むことがあります。
でも、
- 持ち家にしたい
- 戸建てに住みたい
- 新築がいい
- 注文住宅にしたい
は、それぞれ別の条件です。
たとえば、
「子どもが小さいうちは庭付き戸建てに住みたい」
なら、建売住宅でも満たせるかもしれません。
「駅から徒歩圏で、老後も車なしで暮らしたい」
なら、地域によってはマンションの方が探しやすいこともあります。
逆に、
- この土地に建てたい
- 断熱性能をかなり高くしたい
- 家族事情に合わせた特殊な間取りが必要
- 既製住宅では譲れない条件が満たせない
のであれば、注文住宅を考える理由が強くなってきます。
ここまで考えて初めて、
自分たちは「家を買いたい」のか、「注文住宅を建てたい」のか
が見えてきます。
注文住宅が候補に残ったら、ようやく「総予算」を考える
ここから、一般にいう「家づくり」が始まります。
最初に間取りを考えたり、住宅会社を決めたりする前に、総予算の上限を仮置きします。
国土交通省の令和7年度住宅市場動向調査では、土地を購入した注文住宅新築世帯の住宅建築資金+土地購入資金は、全国平均7,646万円、中央値5,100万円でした。
平均と中央値にはかなり差があります。
なので、
「みんなはいくらで建てているのか」
は参考にはなっても、そのまま自分たちの予算にはしにくい数字です。
ここでは、
土地+建物+付帯工事+諸費用+入居までに必要な費用
をまとめた総額で考えます。
土地がある人と、土地がない人では進み方が変わる
注文住宅を建てたいところまで決まったら、次に大きく分かれるのが土地の有無です。
土地がある場合でも、
- 希望する家が建てられるか
- 接道や法規の制限はないか
- 地盤や造成に追加費用がかからないか
などを確認する必要があります。
土地がない場合は、土地探しだけを先行させすぎない方がよさそうです。
国土交通省の令和7年度調査では、新築注文住宅世帯の68.7%が土地を購入していました。
土地に予算を使いすぎると、あとで建物側の希望を大きく削ることがあります。
なので、
土地候補を探しながら、住宅会社にも建物を含めた総額を見てもらう。
この進め方も候補になります。
通勤・学校・家事動線を考えるのは、この段階から
ここでようやく、
- 通勤時間はどこまで許容できるか
- 子どもの学校や保育園をどうするか
- 在宅勤務スペースが必要か
- 家事動線で何を改善したいか
- 将来の同居や子どもの独立をどう考えるか
といった条件が効いてきます。
これらは、家を欲しい「理由」というより、
どんな住まいなら、その理由を満たせるのか
を具体化する条件です。
「今の住まいの何を変えたいのか」が先に決まっていれば、こうした条件にも優先順位を付けやすくなります。
住宅会社へ行く前に、1枚だけ作っておく
注文住宅が有力候補になったら、住宅会社へ相談する前に次の内容を1枚にまとめておくと比較しやすくなります。
1. 家を考え始めた理由
例:子どもが増えて今の賃貸が狭い
2. 解決したい問題
例:あと10年程度、子ども2人にそれぞれの空間が必要
3. 他に検討した選択肢
例:広い賃貸、中古戸建、建売も比較した
4. 注文住宅を候補に残した理由
例:土地を持っている/必要な間取りが既製住宅で見つからない
5. 総予算の仮上限
土地・建物だけでなく、諸費用まで含めた上限
6. 土地の有無
所有済み/候補あり/これから探す
7. 譲れない条件
3~5個くらい
この状態で住宅会社へ行けば、
「何かおすすめの家はありますか」
ではなく、
「この問題を、この予算と条件でどう解決できますか」
と聞けます。
複数の住宅会社へ同じ条件を渡せば、提案の違いも比べやすくなります。
住宅会社を比べる段階まで来たら
まだ1社に決めず、同じ条件で複数社の提案や概算費用を見てみる方法もあります。
ここから先は、「次に何を知りたいか」で分かれる
ここまで来れば、次に調べることも少し見えてきます。
「賃貸のままでもいい気がする」
→ 賃貸と持ち家のLCC比較へ
「注文住宅にする方向で考えたい」
→ 注文住宅の総額へ
「住宅会社をどう選ぶか分からない」
「土地から探す必要がある」
→ 土地選び・土地+建物総額の記事へ
入口の記事ですべての答えを出す必要はありません。
自分が次に何を調べればいいのかが分かる。
ここまで来れば、最初の記事としては十分です。
まずは「なぜ家が欲しい?」からでいい
家づくりというと、住宅会社や間取りから考えたくなります。
でも、その前に、
なぜ、いま家が欲しくなったのか。
そして、
今の住まいの何を変えたいのか。
を一度だけ考えてみる。
その問題は賃貸の住み替えでも解決できるのか。
マンションや建売、中古住宅ならどうか。
それでも注文住宅が合っていそうなのか。
そこまで分かってから、
総予算 → 土地 → 暮らしの条件 → 住宅会社比較
へ進めばいい。
少し遠回りに見えます。
でも、家づくりが進んでから、
「そもそも、何を優先したかったんだっけ」
と戻るよりは、最初に一度話しておく方が楽です。
最初から全部を決める必要はありません。
迷ったときに戻ってこられる判断軸があれば、それで十分だと思います。

